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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(す)203号 決定

主文

原決定を取消す。

当裁判所がした昭和三八年五月二三日の上告趣意書最終提出日の指定を同年一〇月一七日に変更する。

理由

当裁判所は被告人の上告申立にかかる表記事件について、昭和三八年四月九日上告趣意書最終提出日を昭和三八年五月二三日と指定し、その通知書を、郵便により、記録上被告人の住居と認められる京都市左京区高野蓼原町二八番地あてに送達したところ、送達報告書によると、被告人の雇人である奥田好雄が京都市左京区田中馬場町において右通知書を受領したことによりその送達を終ったことが窺われる。ところが、当裁判所の照会の結果、左京郵便局長の回答書により、右送達の当時被告人は既に他に転居していて右京都市左京区田中馬場町(旧町名、高野蓼原町)には住居を有せずその受領者である奥田好雄は被告人の雇人、事務員、同居者のいずれでもなかったこと及び右通知書が右奥田好雄から被告人に交付されたかどうかも疑わしいことが明らかになった。したがって、被告人に対する右通知書の送達は有効になされていなかったものといわざるをえない。

当裁判所は、被告人が上告趣意書を指定の期間内に提出しなかったことを理由として、昭和三八年六月四日上告を棄却したのであるが、右のように被告人に対する上告趣意書最終提出日の通知が有効になされていなかった以上、その瑕疵は原決定に影響すること明らかであり、刑訴四一四条、三八六条二項、三八五条二項、四二八条二項、四二二条、四二六条二項により原決定を取消すべきものと認める。そして、同四一四条、三七六条、刑訴規則二六六条、二三六条により新たに上告趣意書の最終提出日を定めることとする。

この決定は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)

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